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大阪高等裁判所 昭和32年(ラ)176号 決定 1960年1月20日

抗告人 摂津炭業株式会社

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別紙添付の抗告状記載のとおりであつて、これに対して当裁判所は次のとおり判断する。

抗告人は、原決定のうち、破産管財人宮本利吉、同金治説治の辞任申立を許可した部分を取消し右両名を解任する旨の裁判を求め、かつ原決定は右両管財人の辞任の許可の外破産管財人解任の申立を事実上却下したものとしてこれに対して本件抗告の申立をしているものであるが、原決定は右両管財人の辞任の申立を許可し、あらたに破産管財人二名を選任しているのみであつて、解任申立については何等の判断をしていないのであるから、原裁判所は右解任申立については未だ裁判をしていないものとみるの外なく、従つて解任申立却下の決定ありとの前提の下にこの部分に対する抗告は却下せざるを得ない。

そうすると本件抗告の対象となるは原裁判所の破産管財人の辞任についての許可であるというべきである。

よつて右許可がいかなる性質のものかを検討してみるに、破産管財人なるものは公の機関たる本質を有するものと解するが正当であるから、右の許可は裁判所より他の公の機関たる破産管財人に対して与えられるものであつて、いわゆる外部に対する裁判たる性質を有しないものである。従つてこれに対しては特別の規定のない限り不服の申立をすることはできないものというべきである。のみならず抗告人は前示のように右両破産管財人の辞任の許可を取消し、右両名を解任すべきものなりというのであるが、辞任といい、解任というも、いずれもその結果破産管財人が将来に向つてその地位を失うという効果において、異るところがないのであるから、もし両破産管財人において、抗告人主張のような行為があつたとすれば、これに基く責任を問われることあるは格別、抗告人が両破産管財人の辞任の許可を取消し、これが解任を求める利益はないものといわざるを得ない。

以上いずれの点よりするも本件抗告は却下すべきものであるから、抗告費用について民事訴訟法第八十九条に従い、主文のとおり決定する。

(裁判官 大野美稲 岩口守夫 藤原啓一郎)

抗告状

原決定の表示

破産管財人宮本利吉同金治説治両名の辞任申立を許可し、あらたに右事件の破産管財人として

神戸市生田区中山手通六丁目参拾四番地

弁護士 石橋利之

尼崎市神田北通壱丁目弐拾弐番地

弁護士 中口卯吉

を選任する

抗告の趣旨

原決定のうち相手方宮本利吉、金治説治両名の辞任申立を許可した部分を取消し、相手方両名を解任する旨の御裁判を求める。

抗告の理由

一、抗告人は前記破産事件につき、金四百五十三万三千五百十五円の確定債権を有する破産債権者である。

二、前記訴外人吉田八三、河石繁明、中元勇三名は相手方宮本利吉、金治説治両名に対し、二回に亘り破産管財人解任の申立をなし、後更に第一乃至第三準備書面を以て解任申立の理由を追加して解任を求めていたのである。相手方両名も亦前記訴外人三名の第二回解任申立の後昭和三十年三月三十日頃辞任の申立をなしたものである。仍て相手方両名の破産管財人の終任につき、解任申立と辞任申立がなされて事件は原裁判所に係属しいづれに理由があるかが審理せらるることになつたのである。然るに原裁判所は前記訴外人三名の申立については全く審理することなく事実上之を却下し、相手方両名の申立を容認する決定をなしたのである。

三、抗告人は相手方両名の約六年間に亘る全く背信的な破産事務の処理により現状を以てすれば全く配当を受け得ざる状態となり甚大な損害を被るに至つたのである。そしてこの損害は回復することのできないものである。前記訴外人三名は監査委員として相手方両名の背信的行為は解任に値すると断じ解任の申立をなしたのである。之に対する原裁判所の決定は右の如く全く公正を失する不当不法のものであつたのである。

四、原決定は左記の点に於て憲法及び法律に違反するのである。

(一) 原裁判所の原決定は訴外人三名と相手方両名とを差別的に取扱つている。これは国民は法の下に平等であると云う憲法の民主主義の原理に背くものである。

(二) 原決定は訴外人三名が憲法によつて保障されている裁判を受くる権利を侵害した違法のものである。

(三) 原決定は原裁判所の裁判官が憲法第七十六条第三項に違反してなした違法がある。

(四) 原決定をなすに当り、原裁判所の裁判官は全体の奉仕者として行動したものではなく、相手方両名及び本件破産の処理に破産債権者たる抗告人の敵と見るべき日本勧業銀行の奉仕者として行動したものであり憲法第十五条第二項に違反している。

(五) 相手方両名が辞任をなすには正当な理由を要するのであるが全く正当の理由はない。弁護士である相手方両名は法令により裁判所から委嘱を受けた破産管財人の職を正当な理由なく辞任している原決定は破産法及び弁護士法に違反して辞任申立を許可した違法がある。

仍て抗告人は本即時抗告をなすものである。

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